特別事業(Special Initiative 2)

公益財団法人 生存科学研究所「超学際」自主研究会

公益財団法人・生存科学研究所が組織し、京大・九大に関わるアカデミック研究者・実践者5名で自主構成する「超学際研究会」(研究代表:清水美香、研究メンバー:足立幸男・宇佐美誠・清野聡子・吉岡崇仁/あいうえお順・敬称略)では、その際の共通の視点として、市民社会をど真ん中において分野や立場を越えて知と実践を編み直す超学際(トランスディシプリナリー)アプローチを位置づけてきました。超学際アプローチは、すでに言われてきた既存のアプローチを機能面から見直し、たとえば「協働」「変容」といった概念が実際に機能するものへと変えていくことに重きを置きます。多様な知や経験が交差するプロセスを通じて、結果として相乗作用が生まれ、行動変容につながる道筋を整えるための考え方です。そこにはレジリエンス思考とも関わりが深いのです(清水2026)。

超学際とは(超学際研究会2026)

『「学術や科学の視点から見ると、その「内と外」を「同時に」見るということです。具体的には、学術の枠を超えて(”trans”はその意)市民社会の主体同士の「対等な関係」を重視すること』

『易しい言葉を使うと、超学際アプローチは「専門家だけの知ではなく、現場で生きる人々の知と経験を対等に扱い、共に未来をつくるためのアプローチ」と言えるでしょう』

『「現場で生きる人々の知と経験」とは、(中略)地域知、実践知、伝統知、生活知、身体知、経験知といった知、そして「人々の記憶と身体を通して得られる知」』に関連

2025年度公開イベント

2025年3月17日「公開ラウンドテーブル(招待制)自然共生社会への道筋―超学際アプローチから相乗作用を生み行動変容へ―」(於:京都市国際交流協会交流サロン)を開催しました。

持続可能な自然共生社会の実現に向けて、研究者、自治体、実践者それぞれの立場から、多様な取り組みが進められています。一方で、制度や事業、プロジェクトが積み重なるほど、個別の成果にとどまり、行動変容や相乗作用に十分につながりきれていない状況が見られます。

こうした状況を前提に、本ラウンドテーブルでは、研究者、自治体、実践者が同じテーブルにつき、それぞれが関わる取り組みや問題意識を持ち寄りながら、既存の枠組みの中にどのような「隙間」や「ずれ」の可能性があるのかを対話を通じて、普段立ち止まったり、振り返る時間がないまま見過ごされがちなところに、光を当てました。

本ラウンドテーブルを通じて、研究会の中で対話してきたこうした超学際アプローチを外に拓き、既に各方面で進められている自然共生社会への取り組みが本物になる気づきを、参加者一人ひとりが真の対話を通して持ち帰ることのできるセッションとなりました。こうしたセッションを今後、少しずつ枠を拡げながら来年度も開催していく予定です。

レジリエンス―変化をおこす力を編むー地域の再生と生存

清水美香編著『レジリエンス―変化をおこす力を編むー地域の再生と生存』(日本評論社2025)の中で、研究会メンバー(清水美香・足立幸男・吉岡崇仁・宇佐美誠・清野聡子)で8章「変化をおこす力を編むー超学際研究実践」を執筆しました。

8章「変化をおこす力を編むー超学際研究実践」

本章では、地域コミュニティ(ミクロ)目線から描いてきた「変化をおこす力を編む」の視点をマクロにつなげ、組織や社会的環境の現状と課題、そして可能性に踏み込んでいきます。自然のレジリエンスが待ったなしの今、「個々の取り組みが連続性をもつように, いかにその連続体を編成する(編む)か、そのための環境や仕組みをどのように再構築するか」が、「変化をおこす力を編む」上で鍵を握ります。

近年、科学・学術界では人間社会の Transformation(変容)の必要性が強調され、ミクロとマクロをつなぐ「超学際(Transdisciplinary)」アプローチが注目されてきました。ただし、ここでも関係性やプロセスをていねいに紡がなければ、いわば根無し草になりかねません。この点はレジリエンス思考と深く関わっており、本章で最終的に示唆する内容の基盤を成します。

ここでは超学際研究の実践例とともに、超学際アプローチを支えるレジリエンス思考に基づく実践ツールを提示します。それを踏まえて、レジリエンス思考に基づく超学際研究実践のための組織・社会的環境について提起します。最後に、超学際研究実践を促進するための、組織・社会的環境に関わる本質的かつ実践的提案を行い、地域の再生と生存に向けた本書の結びとします。